断熱リフォームの落とし穴

「窓断熱リフォーム」で後悔しないために

今後、より注目される「断熱リフォーム」というカテゴリー。
すでに、国の補助金施策により、「窓断熱リフォーム」が急増しているようですが、窓だけのバランスの悪い断熱リフォームを行うと、中・長期的な視点では以下のような「断熱リフォームのメリット」がすべて裏目にでてしまう可能性があります。

また、今まで高性能住宅を専門に建築している業者以外で、リフォーム専門業者や断熱気密施工の知識や経験が浅い業者に依頼することはリスクが高いので注意が必要です。

 


 

〇断熱リフォームの良い面(メリット)

  1. 快適性の向上・・・冬は暖かく、夏は涼しい室内環境を実現。室内の温度差(上下・部屋間)が小さくなり、ヒートショックのリスクが減る。床や壁の表面温度が上がり、体感的にも寒く感じにくい。
  2.  光熱費の削減・・・エアコンや暖房の使用量が減り、冷暖房費が下がる。電気・ガス代を年間数万円単位で節約できるケースが多い。
  3.  結露の軽減・カビ抑制・・・窓や壁の表面温度が下がりにくくなることで、結露が起こりにくくなり、カビの発生が抑制される。
  4. 健康面への好影響・・・温度差が少ないことで血圧変動が小さくなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが減少。ダニやカビの繁殖が抑えられることで、アレルギーや喘息の悪化を防ぐ。
  5. 家の資産価値向上・・・住宅の性能が向上し、省エネ基準を満たすことで資産価値が上がる。将来的な売却時の評価にもプラス。

 


 

窓断熱のみでは壁体内や床の結露リスクが残る

日本の既存住宅では、窓が最も熱が逃げやすい(家全体の熱損失の約50%が窓からと言われる)ため、まず窓の断熱を強化する例が多いです。しかし、窓を高性能(例えばLow-Eトリプルガラス)に交換しても、外壁や天井、床の断熱性能が低いままだと、外気温に影響されやすい壁や床が冷えたままになります。

そのため、室内の暖かく湿った空気が、その壁面・床などの断熱欠損部に接触すると、そこで結露が起きやすくなります。

つまり、断熱リフォームのメリットとされていたことが、以下のような裏目に出てしまう可能性があるのです。

  1. 快適性の向上×・・・室内の温度差(上下・部屋間)が大きくなり、ヒートショックのリスクが高まる
  2.  光熱費の削減×・・・エアコンや暖房の使用量の変化が期待したほどになく、冷暖房費はほぼ変わらないため、コストに見合った見返りがない
  3.  結露の軽減・カビ抑制×・・・窓に結露が起こりにくくなる代わりに、壁体内などの見えない断熱欠損部に結露が起こり、カビが集中的に発生
  4. 健康面への好影響×・・・ヒートショックのリスクが高まるため血圧変動が大きくなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが増加。従来は窓を拭けば結露がぬぐえたが、壁体内で発生すると乾くことがないため、ダニやカビが増殖。アレルギーや喘息の悪化を促す。
  5. 家の資産価値向上×・・・表面上は住宅の性能が向上したようで、実際は家(壁の中)が腐ってしまい、資産価値が下がる。将来的な売却時の評価にもマイナス。

結露計算による理論値データ例

条件 断熱改修前 窓のみ断熱改修後
室内 20℃・50%RH 露点温度 9.3℃ 露点温度 9.3℃
外気 -5℃
窓表面温度 約5℃(結露) 約15℃(結露なし)
外壁表面温度 約9~11℃(結露ぎりぎり) 約9~11℃(変わらず)
  • 窓だけを強化しても外壁の表面温度は変わらず、室内湿度を少しでも上げるとすぐに露点を下回ってしまう。

  • 結果、窓では結露しなくても、壁や窓枠との取り合い部分で結露が起きる。

 


 

UA値(外皮平均熱貫流率)やQ値(熱損失係数)のシミュレーション例

改修内容 UA値 (W/㎡K) Q値 (W/㎡K)
改修前 2.0 3.0
窓のみ改修後 1.8 2.8
  • 家全体の熱損失を示す UA値・Q値 は窓のみの改修では少ししか改善しない。

  • このため冷輻射や壁側での結露リスクがさらに高まる。普段の生活で発生する水蒸気量は変わらないため、今まで窓で発生した分の結露が熱的に弱い部分(壁の中、床下、屋根裏など)に集中し、家と住む人の健康を蝕むことに。

 


建築基準法改正によるリフォーム工事のリスク

2025年4月から改正となった4号特例について

建築基準法の改正によって、これまで対象外だった戸建て住宅のリフォームでも、構造計算や省エネ性能の確認申請が必要になるケースが増えてきました。
しかし、これまで構造計算が必要な新築住宅を手がけてこなかったリフォーム専門の業者は、耐震設計や断熱性能の詳細な計算、省エネ基準への適合などに不慣れなことが多く、設計のやり直しや審査の遅れ、追加費用が発生しやすいのが現実です。

また、築年数の古い家をリフォームする場合は、今の基準を満たしていない部分が多く、補強や断熱のやり替えが必要になり、当初の見積もりより大幅に工事が増えてしまうことも少なくありません。
こうしたリスクをきちんと説明できなかったり、適切な対処ができなかったりすると、後から「こんなにお金がかかるなんて聞いていない」「工事がこんなに長引くとは思わなかった」といったトラブルにもつながりかねません。

だからこそ、これからリフォームを考えるなら、構造計算や高性能住宅を長年専門に手がけ、耐震や断熱、省エネに関する確かな知識と経験を持った新築業者に相談・依頼するのが安心です。
そうした会社なら、法律や基準の細かなポイントまできちんと把握しており、計算書や確認申請の手続きもスムーズ。将来の安心や暮らしの快適さをきちんと守るためにも、実績と専門性のあるパートナーを選ぶことが大切です。