偽りの高性能住宅への懸念

「多層立体空間設計」はUA値計算上最も不利。それでもなぜ、私たちは”こだわり”として提案しているのでしょうか?

昨今、住宅の省エネ基準はますます厳格化が進み、2022年の法改正では新たに「断熱等級6・7」が創設されました。これにより、UA値などの外皮性能指標をさらに高水準にする住宅が注目を集めています。特に等級7はHEAT20のG3レベルに相当し、これを取得すれば「最高レベルの高断熱住宅」とPRすることが可能です。しかしこの流れの中で、私たちはひとつ大きな懸念を抱いています。それは、こうした性能競争が加熱するあまり、本来重視されるべき「住み心地」や「暮らしやすさ」を犠牲にしてまで、数字上の性能を稼ぐだけの住宅をつくる会社が増えてしまうのではないか、ということです。

実際、断熱性能を極端に高めるために*リビングの天井を低くしたり、窓を必要以上に小さくしたり、吹き抜けを避けて閉じた間取りにする*など、本来その家で暮らす家族が感じる開放感や明るさを二の次にした設計が散見されるようになってきました。確かにこうした方法はUA値を簡単に下げることができますが、それは暮らしの快適さを置き去りにした、いわば数字だけが立派な「偽りの高性能住宅」と言えるでしょう。

例)同じ断熱構造を持つ35坪の家でも

  • 広いリビング+吹き抜けやリビング階段がある家 → 一次エネルギー計算上、冷暖房負荷が大きく不利な計算結果となる
  • 部屋が細かく分かれ、廊下が長い家 → 廊下部分はエネルギー消費をほぼ計算しないので、計算上は省エネ住宅に見える

という計算結果になる場合があります。詳しくは最下段の説明文をお読みください。

これからの家づくりは、ただ性能等級やHEAT20のグレードを上げることが目的ではありません。家族のライフスタイルや心地よさを最優先にし、その上でどう断熱性能や省エネ性を両立させるかが本質です。新しい基準や制度ができる今こそ、その数字が本当に自分たちの暮らしに必要かを冷静に見極め、誠実に家づくりをする会社を選ぶことが何よりも重要だと私たちは考えています。

※HOME建設では、偽りのない快適な住環境をお届けするため、UA値や一次エネルギー消費量計算上で最も不利な条件となる「多層立体空間設計」においても、HAET20G2・G3の断熱性能を実現しています。

計算式の問題点についての説明文

住宅の省エネ性能を評価する際には、「一次エネルギー消費量計算」が使われます。これは家全体の冷暖房や給湯、照明、換気などに使うエネルギー量を計算するもので、省エネ性能の基準をクリアするために欠かせない指標です。さらに断熱性能を示すUA値(外皮平均熱貫流率)も同様に重視されますが、これらの計算には共通して一つの特徴があります。それは、部屋によって冷暖房エネルギーの発生量(負荷)が異なる前提で計算されているという点です。

具体的には、リビングや寝室などの主たる居室は「冷暖房をしっかり使う前提」で大きくエネルギー消費を見積もる一方で、廊下やホール、収納といった非居室部分は「ほとんど冷暖房を使わない前提」で計算され、消費エネルギーは非常に小さく(場合によってはゼロに近く)扱われます。これはUA値の算定にも影響し、非居室は断熱の評価面積には入っても冷暖房負荷が軽く見積もられるため、数値上は性能が良い家と見なされやすい構造になっています。

つまり、同じ広さの住宅でも、大きなリビングや吹き抜けがある家は計算上の冷暖房負荷が大きくなり、UA値や一次エネルギー消費量の数値が厳しく出やすい一方で、廊下が長く部屋が細かく分かれたプランは、廊下部分のエネルギーがほとんど計上されないため、省エネ住宅として有利に見えることがあるのです。こうした計算の仕組みを理解せずに、「UA値や一次エネルギー消費量が低い=光熱費が必ず安い」と単純に考えてしまうと、実際の暮らし方や全館空調を導入した場合のランニングコストとの間に大きなギャップが生じることもあります。

一般的な計算例・業界実務で使われる傾向値に基づく概算モデル ※実際は断熱仕様・方位・窓性能でかなり変わります
千葉県・東京都(地域区分6)の場合、HAET20G2にはUA値(W/㎡K)0.46以下が必要

① 窓面積率(開口率)の違いによるUA値モデル

窓の割合(外壁面積に対する開口率) UA値(W/㎡K) コメント
約20%(小窓主体、南面も中窓程度) 約0.42 HEAT20 G2を容易にクリア
約30%(標準的な掃き出し+腰窓) 約0.48 G2クリア可能だがサッシ性能で注意
約40%(大開口LDK窓+吹き抜けFIX) 約0.55 G2は厳しく、G1レベル

② 吹き抜けの有無によるUA値・冷暖房負荷モデル

プラン 外皮面積(㎡) UA値(W/㎡K) 年間冷暖房負荷(GJ) コメント
吹き抜けなし(2階天井有) 320 0.45 約42 安定したプラン
4帖吹き抜け(天井なし) 340 0.47 約46 UA値+0.02、負荷約10%増
8帖吹き抜け(大空間) 365 0.50 約51 UA値+0.05、負荷約20%増

③ 天井高の違いによる外皮面積・UA値比較

天井高 外皮面積 UA値(一定仕様時) コメント
2.4m 320㎡ 0.43 G2相当で取りやすい
2.7m 335㎡ 0.45 +0.02悪化
3.0m(吹上天井) 350㎡ 0.47 +0.04悪化、日射取得は増える

ただし心理的な快適性や空間の広がりは大きく、窓の取り方で採光メリットもあるなど、「家づくりの本質」が向上する。